その冷たい手、温めてあげる。



屋台でいっぱい買い込んだあたしたちが向かう場所は、賑わうお祭り会場から少し離れた一本桜の木の下。


花火が良く見えるその場所はあたしたちしか知らない秘密の場所。


そこから毎年2人で花火を見上げてた。


なぜか冬馬はその日だけは手袋をしてこなくて、

屋台で買い込んだものを食べる前に必ずあたしの手袋を奪って普段とは比べ物にならないキンキンに冷えた手であたしの手を握る。

そして自分のダッフルコートのポケットに突っ込むんだ。


冬馬の手が温まった頃に手は開放され、花火を見上げながら食べ始める。


毎年行われるその行為に


『手袋してくればいいじゃない』


というあたしに返ってくる言葉は


『手袋してたら箸が持ちずらくて焼きそばが食えないだろ』


って。食べる直前に外せばいいじゃないって、いつも呆れてたっけ。


でも…


お祭りと花火の雰囲気も手伝って、

あたしもその時ばかりは大人しくそれに付き合い、手から体温を分けてあげるんだ。



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