新撰組のヒミツ 壱
二人に背中を向け、光は部下として山崎の後ろに控えて歩く。お互いにこれといった会話もせずに無言で歩き、直ぐに土方のいる部屋の前まで到着した。


縁側から山崎が「土方副長。報告に参りました」と呼びかけて廊下に上がると、部屋の中から「ああ、入れ」という声が聞こえる。


「失礼致します」


「見つかったのか……!?」


襖を開けて早々、土方が勢いよく文台から顔を起こしたと思えば、いきなり本題に入ろうとする。それを見た光はくすっと苦笑いを浮かべ、山崎は僅かに口角を上げて笑った。


「慌てずともよろしいでしょうに」


珍しくも山崎のからかうような声音を聞いた土方は、それによって自分が冷静ではないと悟り、一旦深呼吸をする。


「……うるせえよ。さっさと報告しやがれ」


促された山崎は、後ろに座っていた光に向けて頷く。すると光は一つ頷き返し、音も無く立ち上がって襖の側に控えた。


「では報告を。間者ですが、楠小十郎、荒木田左馬之助、御倉伊勢武。以上の三名のようです」


「……そうか。そうだな……組長――斎藤と原田に協力してもらえ。あいつらなら嫌とは言わないだろう」


裏切り者とはいえ、仲間として同じ釜の飯を食して生活してきた者を、躊躇なく手に掛けられる者は少ない。


しかし、斎藤は仲間には情が厚いが、裏切り者には徹底的に容赦無い。そして、原田はあまり深く悩まず、同じく裏切り行為を許さない。


だから土方は二人を指名したのだ。


「はい。しかし、三人に対して二人では、いくら組長とはいえ、取り逃がす恐れがあるのでは?」

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