新撰組のヒミツ 壱
刀の腕前で井岡に勝てる者など、ここにはほとんど存在しないといっても良いのに――、山崎の声音と表情には、厳しさと怒りの他に、深い悲しみと心配の色が垣間見えたのだのである。


いつも表情を露わにしない山崎。初対面の相手には、本物らしい作り笑いを向け、心を開こうとしないというのに。


それは山崎にとって、井岡がいくら強くても心配で、とても大切な存在だということの証拠に他ならない。


友人。あるいは女――、恋仲か。


(ふん……まさか)
馬鹿馬鹿しい発想に我ながら苦笑した。


確かに顔立ちは稀にみる美しさだ。どちらの性別にしても、浮き世離れした美しさに、女は勿論、男までもが騒ぎそうな程である。


だが総司に一本を取り、口八丁では土方よりも上。剣術と忍術を身に付けた者が女などと、誰が思うか。


何となくだが、道場ではなく、きちんとした教育を施され、大切にされた世継ぎという印象を受けた。


言葉遣いに丁寧な態度。身分が高いもの特有である、滲み出る高貴な雰囲気。そして気圧される威圧感。


とは言え、そんな子息が一人でこのような場所に来るはずがない。
そんな事を考えるとは、きっと俺は疲れているんだ――と、考えた。
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