新撰組のヒミツ 壱
「……気ィ付けや。
男色が居る……襲われんようにしぃ」


声量を限界までに落とした山崎は、隊士に笑って対応する光へと、低い声音で忠告の言葉を発した。


「……そうなのか? 気をつけるよ」


しかしながら、今まで色恋沙汰に無縁だったせいか、光は自分の容姿が他人を惹きつける事を理解していない。


「綺麗だ」と、言い寄られる事も無ければ、女として女々しく容姿を気にする事が少なかった為、無理もないだろう。


まさか。自分に関係ない……、というように受け流す光に、山崎はもどかしさを感じて重い溜め息を吐く。


光を舐めるように見ていた男色の隊士は、彼女が気づかない内に、隣の山崎が冷たい視線で牽制していた為、すぐに散ってしまった。


山崎の無口で冷たい視線。その上、大概の隊士よりも地位が上であり、局長らから信頼されていること。


それが隊士から恐れられ、半数以上の組長さえも敬遠してしまう所以である。


山崎からしてみれば、ここまで優しく話したり笑ったりするのは、光くらいの者だった。


「斎藤、井岡! 少し来てくれ」
昼餉の時間が終わった頃、退出しかけた光が再び土方に呼び出された。

< 82 / 341 >

この作品をシェア

pagetop