魔界動乱期
そのとき、国軍の中に一魔の魔族が合流した。
赤い鎧を装備した他の国軍とは違い、銀色の鎧を身に付けている。

「バ、バンジュウ様!城の中にいたのではなかったのですか!?……さっきのやりとりを聞かれてしまったか?」

「明日はダイフォンが来るのだ。不安がる市民に直接声をかけ、安心させてやるのがこの街を守る者の役目だろう?さきほど市民が騒いでいたが、何かあったのか?」

このバンジュウという魔族は、さきほど城下で市民の相手をしていた国軍兵とは明らかに違う雰囲気を持っていた。
うまくは言えないが、一本筋の通った強い意志があるように、ジードは感じたのだ。

「あ、いえ。明日のダイフォンの事で不安がっていたものですから。安心せよ、と落ち着かせていたのです」

「そうか。やはり皆不安なのだな。よし、明日に備えて体を休めるとするか。お前達も無理はするなよ。今日は体を休める事も重要な仕事だからな」

「はっ!……ふう、聞こえてなかったようだな」

この兵士がホッと胸を撫で下ろしたときだった。

「ドラガンてヤツに居住区の子供がさらわれたらしいぜ。母親も後を追ったんだとよ」

姿を現したのはジード。

「な、な、何を!嘘です!頭のおかしい輩ですぞ!」

「まあでも、たった二魔の親子と五十万の市民の命じゃあ、捨てるしかねえよな、あの親子」

「本当か?お前達?……二度目の嘘は許さんぞ?」

下を向き加減のバンジュウの体は怒りにわなないている。

「本当です……。しかし、明日はダイフォンが来るのです!五十万の命が懸かっているのです!」

「命の重みはどれも同じだ。小さな命を救えぬ者に、大きな命が救えるか!!」

バンジュウはそう叫び、物凄い勢いでどこかに飛び去ってしまった。

「おい、小僧!何をしてくれた!明日、オンタナが壊滅したら貴様はどう責任をとるつもりだ!」

「逃げたんだろ、あいつ」

「バンジュウ様が飛んでいかれたのは、ドラガン一味のアジトの方向……」

「よかったじゃねえか。悪が一網打尽出来てよ」

「バンジュウ様は以前、ドラガンに殺されかけた事があると言っていた!」

「へ?……そりゃあ、好都合。……じゃあな!」

「逃げるか小僧!!」
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