魔界動乱期
そのとき、牙を折られてのたうち回っていたサーベルタイガーがガバッと起き上がる。
そして至近距離からヒートブレスを放った。
たちまちジードは巨大な炎に包まれる。

「ガッハッハッ!燃えろ!………え?」

シュバッ

「玩具……と言ったな」

サーベルタイガーが気付いたときには既に、その体は真っ二つになっていた。
あの瞬間ジードは風を発生させて炎を切った。
さらにその勢いは止まらずにサーベルタイガーをも切り裂いたのである。

ジードはセレナの姿を見て、サーベルタイガーの‘玩具’という言葉を聞いて、容易に想像がついた。
セレナはしっかりと正面から戦ったのではない。
二魔の魔獣にいたぶられ、弄ばれ、いらない玩具のように壊されたのだ、と。
ジードの心は、いつからかセレナを仲間と認識していたのだろう。

仲間の瀕死の姿を見たジードの怒りは沸点に達する。
そしてジードの体から、黒い魔力が滲み出る。

‘ジード、怒りとうまく向き合うんだ。静かなる怒りを正義の闘志に変えろ’

「なんだ?ヤツの体から黒い魔力?と、それを覆うように白い光のようなものが……」

「闇の力は全てを破壊する。だが覚えておけケルベロス!」

「ぬっ!?」

ジードを覆っていた魔力が、全て白い光へと変化した。
同時に溢れ出す膨大な魔力。

「光の力は悪のみを断つ!」
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