ブラッディマリー
1

HEAVEN'S DOOR

 


 頭痛が止まらない。


 また、雨だ。





 目を開けると、窓の向こうに灰色の空。天気が悪いせいで、寝坊してしまったらしい。早く起きてもすることなどないけれど。


 和(ナギ)は重い身体を起こすと、そのまま出窓に座って景色を眺めた。



 窓に映る和のシルエット──その髪は、真っ白。



 その髪は生えぎわが少し黒い。そして重力に逆らわず、さらさらと和の表情に陰を落としていた。


 和はベッドの枕元に置いていたペットボトルのミネラルウォーターを飲み干すと、ぶるりと小さく震える。と、こめかみがずきんと疼いた。



「いてぇ……だりぃ……」



 雨の日、和は少なからず頭痛を起こす。


 たとえば女性によくある偏頭痛ではなく、心因的なものであることは自分が一番よく判っていた。



 和の髪が真っ白になってしまった日から、それは変わらない。




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