ブラッディマリー
「──咬めよ」
「な……ぎ?」
「迷惑なら、とっくに叩き出してる。今の生活、悪くないんだ。だから……」
「だけど、あたし……」
和は万里亜の身体を少し引き離すと、その瞳を正面から見つめた。
「綺麗だったから。醜くなんてなかったよ、お前の紅い目……。だから、いいんだ」
万里亜の瞳が大きく見開かれて、涙がぽろぽろと零れ落ちる。
「だから、泣くなって」
和の言葉に俯いた万里亜は、彼の手でまた上を向かされた。
「その顔──出来ないのに、やりたくなるから……頼むから泣き止めよ、万里亜」
「……和……っ」
万里亜が何か言う前に、和はその口唇を塞ぐ。
交わる為でなく、ただそうしたい衝動に駆られて──重ねた口唇は、それだけで頭の中が痺れそうだった。
そうしながら、和は自分の口唇の端を軽く噛み切る。万里亜に吸血を促すその為に。
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