ブラッディマリー
 


 ぷつり……と浅く食い込んだ万里亜の牙は、容赦なく和に血を流させる。


 一口それを飲み込んだ万里亜は、泣きながら和の胸に顔を埋め、また中を行き来する彼のものに与えられる悦楽に、そのまま翻弄された。



 和が万里亜に確認させたのは、その血が完全にヴァンパイアのものであるということ。


 万里亜にはそれだけで、和の言った「酷いこと」の意味が充分に判った。



 和は俊輔の牙によって、その変化を起こしたわけではない。


 和の身体の奥底に、最初からその血は託されていたこと。



 ──ただの人間である黒澤敬吾は、和の父親ではない。



 それに気付いてしまっては、もう何も知らなかった昔には帰れない。






 万里亜を抱きしめたまま睫毛を伏せ、和は爆ぜた。









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