ブラッディマリー
 


 はっきりとした意思を持たぬ万里亜は、あちこちに彷徨い出す自分の意識がどうにも心地悪くて、目を閉じる。その間も澄人はずっと万里亜に覆いかぶさり、打ちつけてくるように動いていた。



 ずっと、こうして兄と寝ていることに顔色を変えなかった和。時々いたずらに戯れながら、緩やかに動いて行く時間を与えてくれた和。


 そうそう、男の部屋で料理なんて、初めてしたかも。


 黒澤の家に行かないでいたら、明日もミートソース作ろうかな、とか考えてたっけ……。



 関わった男のことなど、いつもならすぐに忘れてしまっていた。


 けれど今、澄人に揺らされながらも、和の姿がはっきりと浮かぶ。


 何の理由もなく抱き合った夜、自分の中に来る瞬間、和は眉を寄せ、睫毛が震えていた。その睫毛の長さまで、今はっきりと思い出せる。



 その不思議に、万里亜の胸は掻きむしられるように熱く、痛く疼いていた。









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