ブラッディマリー
 


『君子を──お前の母親を殺したのは、この俺だ』



 今、俊輔は何と言った?



 君子を──母を殺したと、そう言ったのか?



 にわかには信じられず、和はその場に立ちつくした。


 そんな和の様子を見て、俊輔は痛々しい様子で睫毛を伏せる。その仕草だけで、今の信じがたい言葉が本当なのだと判った。


 和は自分の頭の中、眼球の真上あたりでぷつん、と何かが切れたような音がした気がした。



「……和! よさんか!!」



 和はそのまま俊輔に掴みかかっていた。



 目から、鼻から、口から──ありとあらゆる場所から怒りが噴き出してきそうな自分の身体を支えるのが精いっぱいで、気付くと和はハァハァと肩で呼吸をしていた。



 慌てて立ち上がった敬吾が、2人の間に割って入る。和はその敬吾までも、睨み付けた。





「……知ってたのか!」





 敬吾は一瞬、痛々しい瞳を彷徨わせる。


 そして和から視線を外し、小さく頷いた。



「なん、でっ」


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