ブラッディマリー
 


 ……確か、血を貰うか、セックスをしないと衝動が治まらない、とか言っていたっけ。



 和は静かに万里亜の身体を動かすと、ベッドから起き上がり、彼女をその場に寝かせた。


 ふと、甘い香り。バスルームにあるソープの香りではない。万里亜自身の香りなのかと思ってから、和は長いウェーブをひとふさ摘み上げ、そっと嗅いでみた。


 ……女はこんなに甘く心地いい香りがするものだっただろうか。



 一瞬気を取られた和ははっと我に帰ると、足音を立てないようバスルームへと向かった。


 まだ湿気の残るバスルームの明かりと換気扇のスイッチを入れ、和は曇った鏡に水をかけた。


 鏡に顔を近づけて、首筋を映す。想像通りの、少し大きな虫刺されの痕がそこにあった。



 ……マジかよ。


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