ブラッディマリー
 

 けれども漫画や映画で見るような、2本の牙を突き刺したような痕ではない。


 キスマークの後の内出血が、刺激を受け薄くなった皮膚を破って、血が流れたような。指先でなぞると、小さなかさぶたの固い感触。


 バスルームから顔を出して、まだ眠っている万里亜を見た。



「……信じらんねー……」



 誰に言うでもなく呟いて、和は昨夜浴び損ねたシャワーのカランを捻った。




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