ブラッディマリー
 


「ちょっと、店の前だからそんなとこに立たないでくれるか」



 和は階段を上がり切らないうちに、その後ろ姿に言い放つ。



「……え?」



 和がその人間を少女だと認識したのと、少女が掠れた声で返事をしたのは、ほぼ同時だった。


 少女はのろり……と和を振り返る。街灯に、少女の姿が鮮やかに浮かび上がった。



 自分よりも年下──。



 和がそう思った瞬間、少女は体勢を崩した。



「あっ、おい……!」



 もたれていた塀をずるりと滑り、少女は階段の方に倒れ、そこにいた和に抱き留められる。ぐっしょりと濡れたレースのワンピースは、少女がずっと雨の中にいたことを物語っていた。



「おい、大丈夫か……?」



 その身体の思わぬ細さに驚きながら、和は倒れ込んで来た少女の顔を覗き込む。その美しさにごくり、と息を飲んだ。


 明かりの真下、少女の頬は冷え切って真っ青だった。少女はぼんやりと、和を見上げる。

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