ブラッディマリー
 


「すごい美少女だな、おい」



 倒れ込んで来たまま気を失った少女を抱きかかえ、とりあえず和はそのまま店に戻った。


 その姿を見て驚いた俊輔は、少女をソファーに横たえるよう促した。そして少女の顔をしげしげと眺めると、溜め息をつく。



「芸能人でも、ちょっといないだろ」



 言われて和は、少女の顔を改めて見つめた。意識を失っているから、少し気が引けるけれど。


 額にはりついた前髪を、そっとよけてやる。


 閉じた瞼を飾る睫毛が長い。瞳を開いて瞬きをしたら、ばさばさと音がしそうな気がした。



「おい、和。その子任せて大丈夫か?」



 心配そうにしながらも、俊輔は車のキーを鳴らしながらそわそわしている。


“HEAVEN”の閉店時間は1時。どんなに客が入ろうと、俊輔の都合でぴたりとその時間で閉店する。


 理由までは知らないが。

.
< 8 / 381 >

この作品をシェア

pagetop