ブラッディマリー
 

 和がふとカウンターの中の時計を見上げると、1時を少し過ぎていた。



「ああ、大丈夫です。この子起きたら適当にやっとくんで」


「助かる。悪戯すんなよ」


「誰が」



 和が皮肉な笑いを浮かべたのを見て、俊輔はにっと笑う。



「じゃ、お疲れ様。また明日な」


「お疲れ様です」



 ベルが揺れて、俊輔は店を出た。空気を押し出す気配がしながら、ドアはパタン……と閉まる。



 店の中の温度が、人ひとりいなくなっただけで随分下がった気がした。


 和は再び少女に視線を落とす。


 びしょ濡れで寝かせて風邪を引かないだろうか、と頭を過ぎったが、タオルも何もない。



「……ちょっと、あんた、大丈夫か?」



 和は遠慮がちに、軽く少女の頬をぺちぺちと叩いた。



「……ん……っ」



 少女は嫌そうに身をよじる。そして、しばらくしてからぼんやりと目を開けた。虚ろな瞳がじっと天井を見上げ、やがてゆっくりと和に焦点を合わせる。


 驚く程色素の薄い瞳には、少し緑が交じっている気がした。

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