戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


不審な態度に眉根を寄せる専務に促されたため、きっと大丈夫と嫌な予感を払拭すれば諦めて降車した。


相も変わらずご立派な御影石がドンと大場を取り、武家屋敷かとツッコミたくなる仰々しい門構えを過ぎてもまだ潔く引き返したい。



正直に言わずしても、とにかく此処は嫌なのだ。

そうとは前方をスタスタと行く、無表情なロボット男には言えない――いや、口にしても無駄だろう。


赴きある日本庭園と、やけにピタリと填まる着物スタイルの今の自分を恨めしく思うばかりである。



「いらっしゃいませ、高階様。本日はお越し下さり、誠にありがとうございます。
わたくし…あら?…ええと、もしかして…と、怜葉ちゃん…?」

深々とお辞儀を終えた着物姿の女性が、ご贔屓さまらしいロボット男のお連れ様である私を一瞥した瞬間。

目を丸くして尋ねて来るものだから冷や汗タラリだ。



「え…、は、はいー…」

「やだ!やっぱり、怜葉ちゃんなのね…!
今日は将敏(マサトシ)も居るから、今すぐ呼んでくるわ!」


もう認めざるを得なくて苦笑を浮かべれば、恭しさが消え失せた彼女の声色は明るいものへと変わった。


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