ご主人と使用人
「……ここ、だよね?」
電話した時にメモした紙切れを頼りに、少し高い電車賃をはたいてやっと着いた屋敷は、
想像していたよりも遥かに大きく、高い門に合わせた塀が私を見下ろす。
立派なカメラつきのドアチャイムに恐る恐る指を置いて、大きく深呼吸して押してみた。
リンゴーン
という、鐘のような音が2回鳴って、
「はい、雲雀ヶ丘家執事室でございます」
と、なんとも上品な口調の男性の声が、カメラの下のスピーカーから聞こえた。
「昨日電話しました、藤谷糸緒です」
できるだけはっきりと、カメラに向かってキリッとした表情で言ってみた。
「お待ちしておりました。ただいま門を開けますので、少々お待ちください」
男性の声は丁寧にそう言うと、プツッとスピーカーを切った音がした。
そしてすぐに、大きな門がゆっくりと自動的に開いた。