ご主人と使用人
私は門が完全に開ききってから歩き出した。
一応、小綺麗にしてきたつもりだけど、髪や服が気になって仕方がない。
人気のない玄関までの中庭はとても手入れが行き届いていて、
たまにある鳥やウサギの形をした植え込みが、私の緊張をちょっとだけほぐしてくれた。
建物の前に人が見え、向こうが私に気づくと近寄ってきた。
「藤谷糸緒様、本日は使用人採用面接のためにいらしていただいて、ありがとうございます」
正装に身を包んだその男性は、深々と頭を下げた。
たぶん、門を開けてくれたのはこの人だろう。
あまりの礼儀ただしさに私がポカンとしていると、
「面接は、こちらの執事室で行います」
と、目の前のてっきりお屋敷だと思っていた建物を示した。
「えっ、こんな大きいのが執事室!?」
思わず大きな声を出してしまい、慌てて口をおさえた。
そんな庶民丸出しの私に、嫌な顔ひとつせずに優しく説明してくれた。
「こちらは執事をはじめ、使用人のための住まいでございます。メイド、コック、庭師や守衛などもこちらに住んでおります」
「……はぁ」
返事ともため息ともとれる間抜けな返事しか出てこなかった。
「お屋敷はこの執事室の裏の庭をさらに奥に進んだところにございます」
さらに説明をしてくれるが、あまり頭に入らない。
私は、どうやらとんでもない所に来てしまったようだ。