ご主人と使用人
「お掛けください。
……申し遅れました、わたくしは執事長の住友と申します。
今回の面接の面接官をさせていただきます」
「藤谷糸緒、大学二回生の19歳です。お願いします」
住友さんの丁寧な口調は、私の緊張感を大きくした。
少しもたつきながら履歴書を出すと、
「履歴書は結構ですよ。学歴や肩書きなどを見て決めるのではなく、
糸緒様自身を見て決めさせていただきます」
なんて言うから、私はせっかく出した履歴書を
カバンに綺麗にしまうのがめんどくさくなって、テーブルの隅の方に置いたままにした。
「……あの、昨日も電話で言ったと思うんですけど、私はまだ学生であと二年と少しあります。
それでも大丈夫なんでしょうか?」
「それは心配ございません。今回募集している仕事内容は主人のご子息のお世話係が主でございます。
坊っちゃん方はまだ中学生や高校生なので、糸緒様も昼間は大学の方へ行っていただいても、なんの問題もございません」
「はぁ、助かります……」
それが解決すると、あとはいかに自分を売り込むかだと思った。
料理は得意だし、掃除は好きだし、自信のあることは全て伝えた。
住友さんはそれを笑顔で聞きながら、たまには書き留め、終始丁寧な対応は変わらなかった。
「お疲れ様でした。結果は後日、お電話させていただきます」
「はい、お世話になりました。失礼します」
頭を下げて席を立ち、もう一度お辞儀をしてドアの方に向かった。
入った時は部屋ばかり気になって気づかなかったけど、ドアも相当豪華なものだ。
その金色のドアノブに手をかけようとした時、
勝手にドアノブが動いた。
私は思わず手をひっこめ、少し後退りをした。
「ねぇ、住友さーん。スミレさんいないんだけど……」
勢いよく入ってきた少年は私がいることなんて少しも考えていなかったようで、
そのまま前進してぶつかった。
ぶつかったと言っても軽くだったので、正確には私の胸に少年の顔が埋もれていた。