十五の詩
感情をぶつけて傷つけて何故心配になるのだろうか。矛盾している。
「──ん…」
ユニスが小さく寝返りを打った。ふたりの声が聴こえたのか、目を開ける。
「ユニス?」
「──ヴィンセント…」
「マスター…。すみません。お起こししてしまいましたね」
ユニスはヴィンセントとユリエをぼんやりと見て、「指輪は?」とユリエに尋ねた。ユリエは首をふる。
「それが何処にも…。校内には」
「──」
ユニスが気落ちした様子になった。ヴィンセントが気になって聞く。
「指輪?」
「──。…大切な人の形見です。夕刻頃出かけた時になくしてしまって」
どうやらユリエに探してもらっていた様子である。
ユリエは元気づけるように言った。
「マスター、お休みを。もう一度探してみます」
「──」
ユニスは身を起こすとユリエに「もう探さなくてもいいです」と伝えた。
「ユリエが探してないのなら、ないのでしょう。校外にあるとなると範囲が広がり過ぎます」
「マスター」
「自分で探してみます。ありがとう」
そう言葉にしたユニスはいよいよ眠れなくなってしまったようだった。
ヴィンセントがユニスの手を掴む。思ったより熱が高い。
「氷を持ってくるか?」
「──いえ、いいです」
「くそ、俺が心配なんだ!」
乱暴に言い放つとユニスの身体を抱き上げた。驚いたのはユニスとユリエである。
「ヴィンセント様?な、何を…」
「ここよりもましな空気のところに連れて行く」
ユニスの身体がやたら軽いことにまた別の心配が派生する。いったい何を食べて生きているのだか──。
ユニスは困惑して不安そうにヴィンセントの横顔を見た。
「…ヴィンセント」
「黙ってろ」
部屋を出て、ヴィンセントがユニスを連れてきたのは、寮の屋上だった。
──星が見える。
「さっきよりはましだろう?」
ヴィンセントが屋上の鍵を得意気に指先で回す。ユニスの目には降るような星空がいっぱいに広がっていた。