十五の詩
ノールは少し考え、答えた。
「魔導士を警戒すべきなのは、アレクメスよりもフォーヌでしょう。リオピアと陸続きの隣国となると、それだけリオピアの魔導士に畏怖も感じているでしょうし、敵対心も強い。国境付近の魔導士狩りは近年は少なくなったものの、それにとってかわるものがあるのではないかとの話もあります。それは調査させているところですが」
「そうか。アレクメスはどうする?フォーヌの薬が使われたのだとしたら、裏でアレクメスの魔法学界とフォーヌの魔法学界が手を結んでいる可能性も高い」
「アレクメスの政権抗争は水面下では二分化され、膠着状態にあると聞きます。リオピアに友好的な国王派と、リオピアは叩けるうちに叩いておいた方がよいという反国王派とで対立している。しかし今の国王なら、反国王派もそう簡単にユニス様に手出しは出来ないはずです。ユニス様を襲わせた魔法学界の者がいるとしたら、それが表沙汰にでもなれば学界から追放される可能性もある」
イアンは深くため息をついた。
「しかし油断もできんだろう。王子を公にフィノ様に会わせることは出来んのか?」
ノールが目をあげた。
フィノ様というのはアレクメス国王のフィノ・エルティエーブのことである。
歳がまだ十二であるため、実際の政はフィノの母であるニノンが取り仕切っているのだが。
「フィノ様に?」
「そうだ。というより、王子の相手がフィノ様では駄目なのか?魔法学界で好き放題に暗躍している輩や政権抗争に夢中になっている連中はともかく、フィノ様やニノン様は他国との交易や援助にも精力的だ。王子がフィノ様をお選びになるならリオピアにとってもアレクメスにとっても有益なことではないのか?」
イアンの言うことは一理あった。しかしノールは疑念を抱かざるを得ない。
かつて内面から破壊されたことのなるリオピアの民が、それも王家において、他国との婚姻関係を受け入れることに抵抗はないのかという点である。
また、受け入れたとしてもその影響で流れてくる諸外国の異文化や人間にリオピアの民が馴染めるかどうか──。