触れることもできない君に、接吻を
[ ハッケン ]
俺には兄弟がいなく、家族三人で一軒家に住んでいる。
まだローンは払い終えていないらしい。

今は夕方の五時。
母さんには、俺が学校をサボったことが知らされているはずだ。
俺は多少怯えながら、玄関のノブを回した。

するといつも通りに、おかえりなさいとリビングの方から声が聞こえてくる。
俺はどきどきしながら、靴を脱ぎ、廊下をとおり、母さんのいるキッチンへたどり着いた。

すると母さんは俺の顔を見るなり、はあと盛大な溜め息をつき、一言。

「もう仕方ないわねぇ。前回のテストよかったから今回は許してあげるけど、今度はないからね」

もっと怒られるかと思っていたので、俺は思わず拍子抜けしてしまった。
一気に肩の力が抜けるのが自分でも分かるほど。

「でもなにをしていたの? こんな時間まで」
「なんか登校途中、すごい眠気に襲われて、そこらへんで眠っちゃったんだよ。起きたら夕方だったってわけ」
「へえ、そうなの。真人疲れているのかしらねぇ……。今日は早く寝るのよ」

俺のついた嘘に、母さんは当然のように返事をした。
俺は少し罪悪感を覚えながらも答える。
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