触れることもできない君に、接吻を
そんなとき、急に頭の中に由梨の顔が浮かんだ。
そして俺が別れの際に告げた言葉も。

『それじゃあ、また明日。学校終わったら、すぐ行くから。お土産に情報を持って』

由梨は待っているはずだ。
新しい情報を、俺を。

それならば、俺はどうすればいい。

明日、どんな顔をして由梨に会えばいい。
明日、どうやってこの事実を伝えればいい。

きっと知らないはずだ。
由梨は自分が死んでいるなんて、夢にも思っていない。

それを伝えるなんて、俺は残酷だ。
だけど伝えない方が、由梨にとってキツイだろう。

俺はそこらへんにあったクッションを手に取り、顔を埋めた。

「……由梨」

突きつけられた事実は、あまりにも酷かった。
俺にしても、由梨にしても。
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