触れることもできない君に、接吻を

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なぜだか長く感じる階段を登り終えると、すぐに長い髪を漂わせた、寂しそうな由梨の背中を見つけた。
俺は急いで由梨のもとに駆け寄ろうとしたが、それよりも早く由梨がこちらを振り向いた。

「あっ、本当に来てくれたんだ」

そして満面の笑みでそう言い放った。

一言で言って、度肝を抜かれた。
もっと悲しんでいると思ったから。
自分が生きていないと死って、もっと深く傷付いていると思ったから。

「え……あ、うん。約束だし」

俺は誰が見てもうろたえていると感じてしまうような態度でそう言うと、もう定着してしまったベンチに腰掛けた。
少しだけ疲れがひいていくような気がして、体が楽になっていくのが分かった。

「ねえ、言いたいこと言っちゃってよ」

するといきなり指摘。
俺はやれやれと肩を竦めて、「別に言いたいことなんてない」と言い放った。
だけど由梨は俺をいつも見透かしてしまう。

「変に気を遣わなくていいから」

由梨は素っ気なくそう言うと、俺の隣に座り込んだ。
目は真剣そのもの。
俺は言うべきか躊躇ったが、由梨は聞きたがっている。
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