美しいあの人

神様お願い

「店が終わったら千鶴のところで会おう」
松井さんからのメールはそれだけだった。
用件も書いていない。
店にも来ないようだ。
あたしは不安に思った。
急になんだろう。
祐治の機嫌を取るのと芙美子さんを出し抜くのに必死で、
あたしは松井さんのことを忘れかけていた。
その日も祐治にプレゼントするためのテキストをマンガ喫茶で打ち込んでから店に出た。
眠いので仕事に身が入らない。
指名もろくに取れずに、閉店時間になったらすぐに店を出た。
せんばづるへと向かう。
早く帰って祐治のパソコンを触りたかったが、松井さんに会わないわけにもいかないだろう。
松井さんとの話を早く終わらせるために、急ぎ足で歩く。
不愉快に熱い空気が着ているTシャツと肌の間を通り抜けていく。
あたしは、ハーフアップにしていた髪をほどいて、ポニーテールに結び直す。
熱い空気は首筋にもまとわりついて、それもまた不愉快だった。
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