美しいあの人
あたしが祐治を喜ばせるために綴っていた日々の暮らしは、
祐治の手によって出版社に送りつけられ、松井さんの目に留まった。
松井さんはいつもの
「小人さんが代わりに書いてくれるから」
を確認するがために西条祐治から送られた封筒をあけたのだがそこに入っていたのは、
美しい男を手元に置いておきたいがためにキャバクラ嬢が必死で綴った日記のようなものだった。
うまくはなかったが、その暮らしぶりはいびつで松井さんの興味を惹いた。
うまく料理すればいい商品になるのではと思った。
読み終わった後に気がついた。
自分の知っている話と断片的に似通っているところがあると。
物をくれる女と住まいをくれる女。
そんな話をしていたのは誰だった?
松井さんは、せんばづるへ行って千鶴さんからあたしと祐治と芙美子さんの話を聞いた。
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