美しいあの人
あたしは千鶴さんからライターを受け取って、
ビールくださいとお願いする。
美しい人は本を閉じてテーブルの上に置き、
あたしがソファへ座るのを待っていてくれた。
なるべく可愛く見えるように笑って、あたしはソファへ座る。

「ごめんなさい、びっくりしたでしょう。エリです。よろしく」

仕事で話すよりもゆっくりめに話す。
少しでも良く思われたい。

美しい人が、静かな笑顔をあたしに向けてくれた。
正面から見てもその人はやっぱり美しかった。

「こんばんはエリさん。私は西条祐治といいます」
とても、素敵な声だった。
美しい人は声まで美しいのかと感心した。

さいじょう、ゆうじさん。

この美しい人は、西条祐治さんというのか。

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