美しいあの人
祐治はどこかで自分が書いた覚えの無い小説が発表されているのを見て
疑問に思ったりはしないだろうか。
それとも、自分が書いていると信じ込んでいるのだろうか。
もしくは、西条祐治という作家の存在自体にまるきり興味がなくなってしまったのだろうか。
彼は、小人さんが一人歩きしていることを知っているのだろうか。

半年近くが経っても、西条祐治の姿が見えないことには誰も頓着しなかった。
作家なのだから小説さえ発表されていれば、案外誰も気にしないようだ。
小人さんは、今日も壁に貼られた西条祐治のポスターを見ながら必死に原稿を書いている。

< 188 / 206 >

この作品をシェア

pagetop