美しいあの人
あたしは松井さんの肩から頭をどけて、松井さんの膝の上に手を置いた。

「松井さんだったら、物をくれる女と住まいをくれる女だったらどっちを選ぶ?」
 松井さんは、意味がわからないと言った。
そりゃそうだ。あたしはなにも説明してない。
「普通の女は物も住まいもくれないだろう」
「ああそうか。今ね、あたし彼に物を渡す女に嫉妬しているの。
それに勝つためにはどうしたらいいのかって」
「物で人の気持ちをつなぎ止めておくのは難しい」
あたしもそう思う。

祐治の心が、芙美子さんからのプレゼントで揺らいでいるような感じはしない。
むしろ祐治は芙美子さんからプレゼントをもらうことで、
芙美子さんが祐治を好きだという気持ちを再確認しているだけだろう。

「そこに勝ち負けはそもそもないんじゃないだろうか。エリちゃんはなにに勝ちたいんだ」
「それが分かっていれば、あたしはきっと自信を持てる」
松井さんは、そうか、と言ったきり黙ってしまった。
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