カクテル~Parfait Amour~
「僕は、戸籍上は女なんです。
妃緒と出逢う一年くらい前に胸を手術して、ホルモンの注射を始めました。
そうして会社にいづらくなってきたときに、親戚の持ち物だったこの店で働いていたバーテンダーが辞めると。
それで僕は会社を辞めて、その人が辞めるまでにいろいろ教えてもらって、正式に譲り受けました。
妃緒が初めてここに来た頃は、やっと一人での営業が形になったころでね。」
「全然、そんなこと、考えもしなかった。」
水野さんもうなづく。
「ありがとう。身長が171センチあるから、それもあるのかな。」
少しの間沈黙が続いたが、いやな静かさではなかった。

「おちついたら、また来てもいい?」
「もちろん。僕はずっと、ここにいるよ。」
「俺も仕事で近くに来た時には寄らせてもらいます。
今まではなんとなく秘密にしておきたかったんですが、これからはどんどん人にも勧めますね。」

改めて連絡先を交換し、二人を店の下まで送る。
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