Nocturne
「そんな成瀬さんにビッグニュースがあるの」
「えっ、なんですか?」
まさかの移動だったり?
そりゃ、あり得る。
2年移動しなかったんだから、あり得ない話じゃないし。
うわー、でもそれはいい報告じゃないな。
昇格してもらえるなら、ものすごく有り難いけど。
「実はね、私が成瀬さんに言ってなかっただけで、1年前から上がってた話ではあるんだけどね」
「あ、はい…」
何だろ…?
私は覚悟を決め、心を落ち着かせようと手のひらに『人』という字を書いて飲み込んだ。
「そんなに緊張する話じゃないわよ、もう。相変わらずユニークよね、成瀬さんは」
面白いんだから、と続けて言う藤代さん。
そしてまた、
「だから手放したくなかったのよ、私」
と意味深な言葉を言う。