Nocturne
「…成瀬 樹里です」
≪樹里様?!≫
本気で金光さんは驚いているようだ。
何でって?
この番号は金光さんの番号じゃない。
金光さんはきっと代役で出ただけ。
それはきっと、この掛けてる先にあると思う。
そりゃそうだろう。
一介のOLが知っているような、知っていいような番号じゃないから。
普通は知らないような人の、そんな番号。
「様、なんてやめてください。
…で、この携帯の持ち主は今どちらに?」
そう。
この番号は、
≪会長…匡仙様に何か御用事なのですか?≫
高柳財閥の総帥であり、皇の父親の高柳 匡仙さん。
――――その番号なのだから。