Nocturne




「…なら、俺も頑張らないとな」

「…皇様?」

「…樹里に追い越される前に。
樹里が安心して隣に立てるように、権力を確実にしなければ」




皇の瞳には強い覚悟を映し出していた。




「…樹里様はお強い方です。
ですが、その強さゆえに自分の弱い姿を出すことが苦手のようですね」

「…アイツは…樹里は、人の弱い部分は受け止めてくれるが、自分の弱い部分はうまく出せない」

「…樹里様はこれからどういった人生を送られるのでしょうかね」

「…アイツは強い。
樹里なら、自分の決めた道を突き進んでくるだろう。
それが、その樹里が付き進んだ道が、俺と繋がっているかは分からないがな」




繋がっていればいい。

そう願うだけしかできない。


…何年、何十年先になろうと。




「俺は、樹里しか愛せない」




生涯、樹里しか愛せない。

樹里が俺の共に生きる人。


そう、常日頃から聞かされていた金光は、



「それ、何百回目ですか」




呆れたように言う、金光。



「何度言ったって足りない。
だって、何度言ったって、樹里には届かないんだ」




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