はなこさんのみせ〔完〕
理性なんかで覆い隠していたものを

香りなんかが、剥がしてしまうっていうの?


副店長さんは人差し指で自分の鼻の頭をちょんっと触った。

つられて私も同じように指先で鼻を撫でる。

「この香りは、なんていう」

「ベルガモット。不安な気持ちを穏やかにしてくれる効果があるの」



不安……。


自分でも分かっていた。


だけど、認めたくなかった。


「……」

ほら、くるよ。説教? 同情?

「……」

しかし、副店長さんは私に微笑みかけるだけで、何も言わない。

何も問い詰めない。



ベルガモットの香りのように、私を優しく暖かく包んでくれるだけ。


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