大海の一滴

 今日は朝から、こんなやり取りが続いている。


 達之が話しかけると、すぐさまメモ用紙が返ってくる。


 
「何か、怒っているのか?」


 そう尋ねたら、




『人魚姫は話してはいけないのです』

 と、よく分からない返答が返ってきた。



 ……全く意味不明だ。




 テーブルでは、出来立てほやほやの甘苦カレーが待っていた。


「おっ、美味そうだ」

 わざと大げさに喜んで、達之は席に着く。

 すかさずメモ用紙が差し出される。



『では、いただきます』

「……それも筆談なのか」








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