ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
 ライブが終わった後、
ミツは待ち合わせの居酒屋でフラワー・オブ・ライフのメンバーと合流した。

ミツは、ライブが終わって興奮していたが、
居酒屋で洋二たちを待っているあいだにいささか落ち着いた気分を
取り戻していた。

「よーっ!ミツ!」
 ライブ後にシャワーを浴びたようで、洋二の髪はまだ生乾きだ。
もう少し飲んでいるのかと思うほどにテンションが高い。
「こんばんは、ライブ来てくれてありがとう。」
 後ろから背の高い男が挨拶した。
黒い髪を少し伸ばした鼻筋の通った男で、洋二よりも随分大人に見えた。

「初めまして!あの・・・ライブかっこよかったです!」
 ミツは慌てて立ち上がろうとすると、もう席に座って荷物も置いた洋二が、
「いいってぇ。まずは座ろー、サトシくん。」
 と、言って長身の男・通称サトシくんを手招きした。

確かステージでサトシはベースを弾いていたと、ミツは記憶している。
洋二が赤ならサトシは黒
。髪の色だけではなく、ステージで輝き、
好き勝手に歌う洋二を引き立てる黒。
その黒に抗うように叫ぶ洋二。

「いつも洋二がお世話になってまーす」
 よく日焼けした丸顔の男が顔を出す。
明るく染めた髪をほわほわと柔らかくセットして人懐っこい笑顔。
ライブ中はよく見えなかったが、彼がドラムを叩いていた男だ。

「ミツ!紹介するわ、ドラムの裕太!んでこっちがキーボードの羽月!」

 羽月と紹介されたのが唯一の女性メンバーだった。
肩を少し過ぎる程度に伸ばした髪がふんわりと内側に
自然にカールしている。
外見だけではとても、今観てきたライブに出演していたとは思えない
大人しそうな女の子だ。

ミツに紹介されて、羽月は
「はじめまして、遠野羽月です。」
 と、柔らかい笑顔をミツに向けた。

「羽月、ミツはな、おれらと同い年。今じゅーきゅう」
 洋二は、ライブ終わりで興奮しているのか、いつもより饒舌だ。
「そうなんだ。」
「とりあえず乾杯しようか、もう腹へったし。」
 裕太が言うが早いかボタンを押して店員を呼ぶ。
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