ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
「サトシくんと洋二はビールでいいよな?
 羽月はなんか甘いのにする?あ、ミツは?」
 裕太はてきぱきと注文をまとめていく。
「おれもビールでいい・・・です。」
 さっきまでステージにいたメンバーと一緒にいる現実に
ミツは今さら少し緊張した。

 サトシは火をつけたばかりのタバコの煙をブハっと吐き出し、笑った。
「ミツ、おれと裕太は確かに年上だけど、敬語なんていいいよ。」
「そうだよ、洋二はおれらに敬語なんて一度も使ったことねーよ」
 裕太も同調して、メニューで洋二をはたく真似をする。
「ガッコじゃねーんだから関係ないだろ!」
 と、ミツがムキになる。

「私カシスウーロン。」
 羽月がメニューから顔をあげて言う。
「了解!じゃあ食べ物はとりあえず適当でいい?」
「裕太にまかせるよ」
 と、サトシは慣れた調子で答える。
「あ、ミツってなんか食えないもんあった?」
「いや、ないっす。」
「んっしゃ。オッケー。」
店員がやってきて裕太とやりとりをする。

「ちなみにね、洋二はね、トマトだめなの。」
 羽月が内緒話のようにミツにささやいたので、ミツは少し耳が熱くなった。

「なあ、ミツ、ライブどうだった?」
 洋二がそわそわした様子でミツの正面に座ってテーブルに乗り出す。
「すごかったよ、びっくりした。」
「マジでかー、聞いた?サトシくん!」
「洋二は今日張り切ってたなぁ。初めてのお友達が来るとかで。」
「おれはいつもがんばってるだろうよぉ。」

 ミツが感想をいう間もなく、洋二は次々に話題を変えていく。
店員がビールジョッキを両手に持ってやってきて、
ミツはフラワー・オブ・ライフのメンバーと乾杯をした。

サトシがリーダーらしく、音頭をとる。
「じゃあ、今日もライブ成功ってことで、お疲れさーん!」
「カンパーイ!」
 ミツとフラワー・オブ・ライフの四人は、
四つのジョッキと一つのグラスを合わせた。

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