ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
 手際よく洗い物を片付けて、レミはミツの隣に座った。
ミツは少し体をそらしてレミのスペースを確保する。
いつもより少し、レミが離れて座ったことに気づく。

「今日、林くんと話したよ。」
「林と?ふーん。」
「ミツどうするつもりなのかなって言ってた。」
「どうって。」
 ミツだって、レミの言いたいことはわかっていた。
卒業したらどうするの?
そんな言葉、ミツの中のミツが一番ミツに話す言葉だ。

「このままじゃ、困るよ。」
「なんで、おまえが困るの?」
 ミツは苛立ちを抑えられず、しかし、これ以上無意味な会話は止めたいと、
目線はテレビから離さない。

「ミツはずっと私と一緒にいたいって思わないの?」
 レミはさっきよりも少し大きな声で聞いた。
「思うけど何?」
 しまった、とミツは思った。
今の言い方は投げやりすぎる。

「私がこんなに毎日、就活頑張ってんのに。」
「それはおまえがやるって決めてやってることだろうが。」
 ああ、止まらない。

「そうゆうこと言ってるんじゃない!」
 逃げ出したい。面倒くさい。イライラする。

「ミツとは共有できないってわかったの!」
「わかってんならいいんじゃないの。」
「わかってないのはミツだよ!」
「うるせえな!でかい声出してんじゃねーよ!」
 ああ、矛先違うほうに向けるダメなパターンだ。

「そっちじゃん。大声出してんのは・・・。」
 レミの目には涙が溜まっている
。しっかりと引かれたアイラインに
バサバサとしたまつげが涙で固まっている。
その目にまっすぐにミツは射ぬかれて、体が硬直する。

「おれに何を期待してんだ・・・。」
 ミツは固まった体からぽろりと言葉を吐いた。
わかっている。
就活がうまくいっていなくてイライラしているんだろう。

「・・・・。」
 黒く縁取られた目から大粒の涙がこぼれて真っ赤な頬を伝った。
「・・・・。」
おれのふがいなさが頭に来るんだろう。
ふがいなくて悪かったな。

「帰る・・・もう、来ない。」
レミは立ち上がって自分のバッグを拾い上げた。
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