菓恋(かれん) ~be+ひと目惚れing~
そう言って“ぐいっ”と、あたしの腕を引っ張るパパ。


「待って。自分の洋服に着替えてくるから」

「そんなこと言って逃げ出すつもりじゃないだろうな」

「逃げも隠れもしないわよ、あたしのことを信用して」

「…分かった。じゃあ、急いで着替えてこい」

「うん……」


あたしは着替えながら思った…、

“見損なったよ、王子……”

…って。

“いくら相手がフランチャイズ本部の社長だからって、なにもそこまでへーこらすることないじゃん…。ハッキリいって、今日の王子はカッコ悪かったよ……”


でも、あたしにはここでどんなにねばってみたところで、今の王子にソノ気がない以上、また出直して次の機会にかけるしかないことも分かっていた。


まるで青天の霹靂(へきれき)みたいなパパの電撃奪回作戦は見事に成功。

そして、あたしは社長令嬢としての安らかな地獄の日常へと連れ戻された―――――
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