運命のヒト

「ははっ。ゴメンねぇ、酔っ払っててよく覚えてねーや」


信じられない……。
初対面であんなことしといて、覚えてないってどういうことよ。


「じゃあ……誰に対しても、簡単に抱きしめたりできるの?」


すると彼はクイッとあごを上げ、軽薄な視線をあたしに投げた。


「できるよ」


その声があまりに冷たくて、何も言い返せなかった。


悪い? と彼に目で尋ねられる。

悪く、ない。アンタがどんな男だろうが、あたしには何も関係ない。


そもそも名前も知らない男。

昨夜初めて会って、ワケもわからずに絡まれただけ。ただそれだけ。

今後一切、関わる必要なんてない人なんだから……。


あたしは時計台に背を向けて、その場をあとにした。




  * * *

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