運命のヒト

『――もしもし、美園? 家内が迷惑かけてごめん。今から会えないか? 君んちの近くの公園で待ってるから』


その留守電を聞いたのは午後11時すぎ。友人たちと別れた後、ひとりで別の店で飲み直し、酔っぱらって帰りのタクシーに揺られていたときだった。


『今から会えないか? 君んちから10分くらいの所に、ちょっと大きい公園あるだろ? あそこで待ってるから』


留守電の最後に入っていたその言葉で、一気に酔いがさめる。

どうしよう、と迷っているうちに、タクシーは公園の前の道に差し掛かった。


「すみません。やっぱりここで降ろしてください」

あたしはとっさに告げて、お金を払いタクシーを降りた。


真冬の夜風にぶるっと身を震わせながら、足早に公園の中へ入っていく。

街灯に照らされた遊歩道を進んでいくと、前方に見えてくるのはタイル敷きの広場。

中央には大きな噴水。それを囲むように据えられたベンチ。


そしてその奥には、灰色のレンガ造りの時計台が、重厚な佇まいを見せている。

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