§魂呼びの桜§ 【平安編】
宮中にも随分慣れましたか
父である左大臣の問い掛けに、女御は深く頷いた。
主上のご寵愛も篤く、私も安心申し上げているのですよ
もう、直接対面することは許されない。
娘であっても、帝の后になった以上身分は上。
対面は御簾越しに行われる。
お互いの細かい表情を読み取ることは難しい。
女御が帝の寵愛と言う言葉に、小さく眉をひそめたことに父は気付かない。
主上はたいそうお優しく、慈しんでくださいます
その言葉に、大臣は満足そうに頷いた。