あなた色に染まりたい
「あ」


「ん?どうした?」


「それ……」




テーブルの上にあるものを指差す。




「鍵?」


「うん……蓮が持ってて」




ほんとは、もっと早くに渡しておくべきだった。


そしたら、こんな風に蓮に嫌な思いをさせなくて、すんだのかもしれない。




「いいのか?」


「うん……蓮に持っていてほしい」


「ん、サンキュ」




そう言って、蓮にギュッと抱き締められた。


あたしも蓮の背中に腕を回す。




「なぁ……」




胸に耳を当て、リズムよく鳴る鼓動を聞いていると、蓮が遠慮がちに口を開いた。




「ん?」


「……」




話し掛けたのに、黙っている蓮……




「蓮?」




蓮の胸をそーっと押して離れる。


そのまま蓮の顔を覗き込んだ。


蓮は眉を下げながら、苦しそうに口を開く。




「どうすんの?」


「何が?」


「……プロポーズ」




プロポーズ……


あの頃の気持ちを思い出して、少し揺れてしまったけれど……、最初から答えは決まっていた。




「断るよ」


「後悔しねぇの?」




後悔って……蓮?


何を言っているの?


あたしは、蓮が好きなんだよ?




「俺、紗羽が“断る”って言って、すっげぇ嬉しい。でも……大輝さんのこと、本気で好きだった紗羽知ってるし、実際会ってもすっげぇ大人でカッコ良くて……紗羽にとって、ホントにそれでいいのかなって」


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