あなた色に染まりたい
立ち上がってカーテンを開けたいんだけど、痛くて立てない。


そのうちエンドロールも終わって、テレビの明かりも消えてしまった。



なんか、沈黙……



この沈黙を破るように、蓮が口を開く。




「入学式の日……俺、勧誘のビラをもらう前に、紗羽さんを見たんだ……桜の木の下で」


「……」




桜の木の下……


大輝を思い出して、涙が出ちゃった時。




「桜を見上げながら流す涙が、すっげぇ綺麗だった」




見られてたんだ。


でも……




「綺麗な涙じゃないよ……凄く、醜い涙」


「何で?」


「……」




電気は消えているとはいえ、昼間だから薄暗いし、蓮が眉を下げながら話しているのが、わかる。


でも、蓮とはまだ出会って間もないのに、失恋の涙だなんて言えないよ。




「悟さんの車の中で流した涙も、アパートで飲みながら流した涙も、同じ涙?」




蓮って、凄く鋭い。




「はは……そうだよ。全部、醜い涙」


「……俺には綺麗な涙に見えたけど」


「美化しすぎ」




…――また沈黙になった。
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