あなた色に染まりたい
わけがわからず、伸ばした手を宙に浮かせたままでいると……




「ほら、口開けて」




いつの間にか目の前には、蓮の指に摘まれたケーキがあった。


この雰囲気に呑まれるように、あたしは自然と口を開けた。


その瞬間、口の中に広がったチョコの甘さ。


そしてまた、蓮は自分の指を舐めている。




ダメだ……


どきどきが止まらない。


気付いたら、蓮の仕草から目を離せなくなっていて……




「紗羽?」




そんなあたしの様子に気付いた蓮は、不思議そうに顔を覗き込んでくる。




「あ、付いてる」




あたしの口許を見ながらそう言って、そのままその場所へ唇を寄せてきた。


そして口許についていたチョコをペロッと舐めてから、唇を重ねた。
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