あなた色に染まりたい
「紗羽さん、何で?」



「……行きたくないから。」




あたしは視線を落としながら、最後の一口のうどんをすすった。



蓮があたしを見てるなぁって気付いていたけれど、気付かないふりをした。



「貴子さん、俺と紗羽さんは保留にしといて。」



そう言って、蓮はあたしの手を引いて歩き始めた。



「ちょっ、蓮?」



は、はやっ!


歩くの早すぎ!



「ちょっ、蓮ってば!足の長さが違うんだから、もっとゆっくり歩いてよ!」



180㎝ある蓮と158㎝のあたしの歩幅が、一緒であるはずがないんだから。



「あ、ごめん。」



夢中で歩いていたのか、あたしの声にハッとした顔を見せた蓮。



「で、どこ行くの?」


「中庭。」



蓮は言い出したらきかないということはわかっているから、おとなしくついていった。





中庭のベンチに二人で座る。



あたしたちの他には誰もいなくて、遠くでワイワイと騒いでいる声だけが聞こえてくる。



「何で行きたくねぇの?」


「……」


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