恋の魔法と甘い罠
けれどあたしの、しゅん、とした表情に気づいた和泉さんは、いきなりあたしの髪を思い切りくしゃくしゃくしゃ……と掻き回し始めた。



「ちょっ! 何するんですかっ!?」


「辛気くせぇ顔してんじゃねぇよ。俺が『ありがたかった』つってんだから素直に受け取っておけって」



そう言って、あたしの顔を覗き込んで視線を合わせてきた。


やさしい笑みを浮かべながらも真っ直ぐに向けられる綺麗な瞳に、あたしの心臓は活発になっていく。


そして、ぽん、と軽く頭を小突くと、ゆっくりと体を起こして「シャワー浴びてくる」と言って部屋を出ていった。


その背中を見ながら、左胸辺りのシャツをぎゅっと握り締めて、どきどきと激しく動く胸の音を鎮めるように、何度も何度も深呼吸をした。
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