恋の魔法と甘い罠
「これから、部屋に来る?」


「えっ……」



思わず和泉さんを見上げると、とってもやさしい表情をしていて。



「俺、一人部屋なんだよ。一緒に飲み直さねぇ? 実はビールを冷やしてあるんだよね」



なんて嬉しそうに話す和泉さんだけれど、予想外の言葉にあたしの心臓はバクバクとあり得ないほどの大きな音をたて始めた。


だってさっき、一緒に飲もう、としつこく誘われていた女子社員から逃げてきた、と言っていたのに、あたしだけ『部屋に来る?』なんて言われて、期待しない方がおかしくない?


でも、お互いに失恋から立ち直ったことへのお祝い、と言われればそれまでだし。


……うん。


期待したい気持ちは一先ず心の奥に押し込んで、一緒に飲めばいいよね?


今はただ、二人でいられるだけでも嬉しいもん。
そういう時間を楽しく過ごせればいい。


だから、



「どうする? 来る?」



と再度訊いてきた和泉さんにコクンと頷いた。
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