恋の魔法と甘い罠
「ん?」



唇を離した和泉さんは、ゆっくりとあたしの方へ視線を向けてきた。


けれど、大人の色気を纏った熱い瞳とぶつかって、さらに鼓動が大きく跳ねる。



「今日はこのまま、ここにいるだろ?」


「え」


「朝までここにいればいい」



その言葉に、さらに鼓動が早くなった。


そりゃあ、あたしだってずっと和泉さんの傍にいたい。


けれど、今の状態でこのまま一緒にいたら、確実に、



「……心臓が、壊れちゃう」


「はあ?」


「ごめっ、なさいっ! 部屋に戻ります!」


「……」



乱れた襟元を素早く直し、スマホと財布の入った小さなバッグを手にとると、そのまま部屋を出ようと和泉さんに背中を向けた。
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